「ん?何買ったんだ?」
そう言って二人の買い物袋を覗き込む。
「お好み焼き粉に干し海老と青海苔・・当麻、重くねえか?で、えーっと、伸坊はキ
ャベツか。お好み焼きかぁ。美味そうだな」
「うん。伸ちゃと一緒に買ってきたの」
「そっか、ご苦労さん。じゃあご褒美にいいモンやるから、ちょっと待ってな」
そこに居ろよ、と言い置いて店の中から出てきた秀の両手には、月餅が一個ずつ。
「わぁ!ありがとうございます」
「秀ちゃ、大好き!ありがとう!」
お菓子を貰って、二人は秀にバイバイをして、川に向かって歩き出した。

 やがて行きにも渡った川に突き当たる。するとT字になった左角の古書店に当麻ち
ゃん達は入って行った。小さな子供と古書店の繋がりが思い浮かばず、大人達は揃っ
て首を捻った。幼稚園のお友達の家でもない筈で、伸ちゃんも「今度は誰と会うんだ
ろう」と思っていた。
 当の当麻ちゃんはといえば、どんどんと奥へ進んでいき、店番らしき金髪に今時に
は珍しく、着物をきちんと着こなした若者に声を掛けていた。
「征ちゃ、こんにちは」
それまで本を読んでいた若者が視線を向け、相手を見てニコリと笑った。
「当麻ではないか。今日は父上と一緒ではないのか?そちらは?」
「今日はね、お使いなの。こっちは伸ちゃだよ」
「こんにちは。もうりしん、です」
 伸ちゃんは、当麻ちゃんの知り合いの多さに、ちょっと驚いていた。伸ちゃんの知
っている大人といったら幼稚園の先生と、水泳教室の先生くらいだったから。
「挨拶がキチンとできるとは良い子だ。今日は父上に何か頼まれたて来たのか?」
尋ねられた事に、此処までの出来事を聞かせている当麻ちゃんを、伸ちゃんはぼうっ
と見ていた。今は伸ちゃんがどんなお友達なのかを一生懸命話している。
「では彼は当麻の大事な大事な友人なのだな」
にっこりと笑いながら自分を見て、征ちゃ、と呼ばれた人が当麻ちゃんに尋ねた。
「うん!伸ちゃは、すっごぉーく優しくってね、大好き!」
当麻ちゃんは両手を広げて、どれくらい伸ちゃんが大好きかを表現してみせる。背伸
びをして「こーれくらいっ!」と説明する当麻ちゃんに、伸ちゃんはなんだか照れ臭
かったけど、でもとっても嬉しい気持ちになった。
「そうか。ではそろそろ母上も心配しておられるだろう。2人とも車に気を付けて帰
りなさい」
「「はーい」」

 征ちゃ、またねー!と店先でサヨナラをして、漸く2人はアパートへと向かった。
行きは怖かった二匹の犬も、帰り道は達成感からか、全然怖くはなかった。当麻ちゃ
んを道路の内側にして、二人は幼稚園で習った歌を歌いながら手を繋いで帰ってきた
のだった。空いた手に持った荷物は、ちょっと重たくて時々引き摺りながら歩いてき
たから、買い物袋に小さな穴が開いていたけれど。
 そして、家で待っていた大人たちの心配など知る事も無く・・・。


 その夜、二家族合同でお好み焼き会が催されたが、帰り道に食べたタコ焼きが響い
たのか、伸ちゃんは余りたくさん食べることが出来なかった。食べきれなかった分は、
そっと当麻ちゃんのお皿に乗せてあげると、当麻ちゃんは嬉しそうに口に頬張ってい
た。伸ちゃんはそれで満足だった。当麻ちゃんは貰った月餅も食べていたんだけれど
ね。

「「ごちそうさまでした!」」



終
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