66年ぶりの「戦地からのたより」

(NO18)<伊那村報を見て考える>連載31回

  伊那村報・第17号 昭和14年10月10日発行

《 『男心と秋の空』、『女心と冬日和』 》

<編集余録>

『男心と秋の空』という、これにたいして「女心と冬日和(ふゆびより)」という。いずれにしても、これは悪いたとえで、こんな事では日本男子の本領たる「信義」も、日本女性の誇りたる「貞操」も、台無しになる。

しかし、今日この頃の世界情勢こそ、正まさしくこの秋の空と冬日和、協定だの、条約だのといったところで、自分に都合悪くなると、破れぞうりのように捨ててしまう。実に複雑怪奇、いつどう変わるやらわけがわからぬ。
こうした時勢には、グッと腹のそこに力を入れて、慌てず、騒がず、あくまでも自力本願で、自主独往の外はない。といって、他国と強調することを退けるわけではないが、「根をしめて、風にふかるる、柳かな」の一句を忘れないのが肝要である。

    戦線からの便り☆ 岡田先生より、

拝啓、 意外のご無沙汰まことに申し訳なく、衷心よりお詫び申し上げます。

 小生もさいわい無事軍務に服しており、5月末まで司令部内にて軍事、経済、宗教、政治など広範囲の教育を受け、その後、青島、済南、天津等々各地を飛び歩き、その間たびたび討伐行動に従事いたし、今日に至りました。

 長期、長期と申す言葉は現地にありて始めてその内容をつかみ得ました。

 いよいよ粉骨砕身ご奉公の誠を尽くすべく、努力いたしておりますのでご安心ください。(近々、某重大任務につきうる予定です。)

 秋冷の候、皆々様のご健康を衷心よりお祈り申し上げます。まずはお詫び方々右ご一報まで。不一

       9月14日  軍事顧問付  岡田久志   伊那村役場殿

● 時局に鑑みかんがみ断乎生活改善をはかれ!生活改善、節約貯蓄・

自己の生活を検討し、「非常時経済生活」をはかり、

生活改善村申し合わせ規約を実行すること

嗚呼ああ・武勲とこしえに馨し・<10月15日午後1時、場所小学校庭>

故陸軍工兵伍長 村上文人君  村葬儀執行

  注意 村民こぞって会葬し、哀悼の意を表すること。会葬の際は礼服に喪章をつけ謹慎を旨とすること。各戸必ず弔旗を掲揚のこと

 《Aのコメント》

 小学校のこよみでは、1日・上塩田神社参拝・興亜奉公日。3日・銃後後援強調週間。6日・兵隊への慰問分発送。15日・村葬。18日・靖国神社臨時大祭。24日〜30日・防空演習。30日・教育勅語記念日。となっている。小学生の一ヶ月も戦争とともにある。

次回予告・「 軍部供出、兎(うさぎ)毛皮、兎肉について」

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