66年ぶりの「戦地からのたより」

(NO28)<伊那村報を見て考える>連載31回

      伊那村報・第27号  昭和15年8月10日発行

《 いまだ白米を食べている者は、穀賊だ!! 》

◎ 奉公米配給について

砂糖と同様、飯米の切符制が8月から実施されることになりました。

なお、左記、特に熟読ご了知ください。

1、

 基準消費量は、平均一日・二合八勺。これだけでは不足と思いますが、その不足分は、混食、代用食、その他節米によって補ってください。

2、  混食、代用食などによっても配給数量が不足の場合は、役場へ申し出てください。飯米がなくて困らせるようなことは、絶対に致しませんからご安心ください。
3、  飯米購入申し込みは、最少限度の必要量を申告してください。
4、  本村奉公米配給所は産業組合です。
5、  不慮の出来事によりお米を沢山消費する場合は、役場の証明により申請配給を受けることが出来ます。
6、  配給を受けようとする場合は、切符裏の注意書きを良く見てください。
7、  奉公米運動の精神は、国民全部が同じ程度の不自由を忍びあって、協力一致国策に順応して、現下の食糧問題を解決するにありますので、全村一戸残らず節米を徹底的に実践して下さい。

いまどき、まだ白米食をしている様な者は、病人でない限り穀賊と断言してはばかりません。

   戦線からの便り 馬場美登 君より

拝啓、小生任地到着以来おかげさまに健在にて、毎日の炎暑も物ともせず、襲撃してくる敗残兵を相手に時々交戦しており、過日も任地到着まもなく、宵闇を破って○○の匪賊が夜襲してきましたが、いつも武装待機の我が陸戦部隊によって追いはらいました。

 支那兵もだんだん戦争になれてか、またやけくそに来るか中々接近してきます。しかし、時々こられては実に迷惑ですから、陸海協力部隊によって、遠く山岳地帯まで追い詰めたので、最近は出てきません。(中略)

 内地も霜害にて春蚕(はるご)も遅れて銃後の皆様中々ご苦労のことと推察申し上げます。

 しかし、国家は益々多事多難を加えている事なれば、銃後皆々様にはいよいよご健勝にて非常時打開のため懸命の努力致されんことをお願い申し上げます。

 まずは暑中お伺い方々、銃後皆々様のご健在をお祈り申し上げます。

       7月13日  中支小林部隊  馬場美登    銃後奉公会御中

  戦時下!!無駄なき生活の創造へ

※ 旺盛なる奉公心     ※ 不抜なる持久力

 すてよ、ぜいたく品   建てよ、新生活

◎産業組合欄

 支那新政権の成立を迎えて事変はいよいよ長期建設の段階に入った。日本は今日ほど大きく国家総力の発揮を必要としたことはない。

 近代戦はすべての国民を経済戦、思想戦へとかりたてる。足りない労力足りない資材をもって、米を繭まゆを増産せよ、これが経済戦線において農村に与えられた戦闘命令である。

 無理か?、そうかも知れない。しかし時局はこの敵陣突破命令を発するのである。

 労力不足という敵陣、肥料不足、資材不足という敵陣をいかにして突破するか、その戦術はただ一つ農家の団結協力によって一気にこれを突破する事ができるのだ。

<編集余録>

 

 第二次近衛内閣が待望の中に生まれて、新しい力が国内にみなぎっている。不介入のままでいつまでも指をくわえてみていては、自分の身が詰まる。わが国は、一路東亜の安定に、わき目もふらず進むばかりである。

<度胸さだめて乗り出すからにゃ、あとへ引かない帆かけ舟>

Aのコメント》

 穀賊という言葉がとびだしてきた。「国賊こくぞく という言葉もある。国賊とは<国をみだすもの>で、戦争反対者に国賊のレッテルをはった。

 特殊木炭公定価格決定!の記事には、<ガソリン木炭10kg1円45銭>とある。終戦後ガソリン不足のため“木を炊いて走る”木炭自動車が動いていた。力がなくて坂道でエンコしたものだ。

 主食の米にも事欠いているのに、「新しい力が国内にみなぎっている」とは、支離滅裂。

次回予告・「 滅死奉公 」

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