66年ぶりの「戦地からのたより」

(NO30)<伊那村報を見て考える>連載31回

     伊那村報・第29号 昭和15年10月15日発行

《 日独伊三国同盟成立!

 村報廃刊、口から耳へ非常時体制で行く 》

時局克服の詔書(天皇のお言葉を書いた文書)渙発あらせらる

帝国の当面する重大時機についての深き思し召しから、国民の進むべき道を示させ給う。

一億国民は、聖旨を奉戴してさらに協力戮力もって、聖慮に応え奉らねばならぬ。

◎ 常会は実践協力体

 常会は国民精神総動員の有力なる実践網として、重要なる機関であって、時局を認識し、政府の方針および国策を国民の細部まで徹底せしめ、その協力を求むるに緊要なものである。



上意下達、すべての国策がこの常会によりて実行に移される。

月一回開催し、時局の認識を高めその部落が全員一致の行動をとる。

要するに、官民一体となり、一億一心国民精神の高揚と、国家総力の充実発揮につとめ、非常時局を克服し、世界新秩序建設の礎石となるのが常会である。

    戦線からの便り☆ 北原茂雄 君より、

拝復、先日は村報ならびにお見舞い状ご送付くだされ有り難く拝見いたしました。村長殿はじめ皆々様には、ご健在にて日夜寝食をも忘れ、銃後奉公にご精励くださる由、第一線より深く感謝いたしております。

 降って小兵お蔭様に、相変わらず元気にて軍務にご奉公いたしております。

 当、任地は第一線○○近くにて、昼夜の別なく今なお銃声が聞こえております。夜間の歩哨など一層と緊張いたします。

 我が輸送隊は、後方○○より輸送いたしておりますが、後方にては我が軍の力により平和となり、日章旗など立て、農民も只今では稲の刈り取りに一生懸命です。

 時節柄、銃後皆々様のご健康をお祈り申し上げます。 早々

       8月23日  中支第一線にて 北原茂雄   伊那村役場御中

< 村報廃刊の辞   伊那村長 ○○○○ >

 今般、新体制への国策に順応するため、全国的に町村報、各種団体報などの廃刊をその筋よりすすめられ、本村としては、本号限り自発的に、廃刊いたすことに決定いたしました。  (中略)

 新体制への発展的、飛躍的国策に順応するためには当然の事です。

 村報は廃刊しても、今後は部落常会、隣組を通じて、活字によらず、口から耳への非常時体制で行くわけで、発展的廃刊です。(後略)

《Aのコメント》

 「その筋より(命令)、新体制への国策に順応するため廃刊・・・」 私の生まれた1941年(s16)、太平洋戦争開戦の12月8日までは、まだ1年と2ヶ月もある。

 満州事変から支那事変へと10年、国民の末端、村民の実状はまさに“困苦欠乏”である。これから、1945年8月15日の終戦まで5年もある。

 “最後には神風が吹いて日本は勝つ”・・・悲しい事だ。

次回予告・

「 連載最終回・まっしぐら、太平洋戦争へと突き進む」

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