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省エネ 省エネコンクール応募論文
古道具 再生した道具達
飛騨高山紀行 飛騨の里に木挽きを訪ねる










省エネ

省エネコンクール応募論文から

 地球環境の悪化は、私たちの浪費に原因があると思う。
身の回りにあるものを有効に使い切るには、新技術も高度な設備もいらない。
我が家では、仕事と生活で使う資源が密接に関わりあっている。
仕事は個人営業の木工屋なので資源は木材が主体となる。
仕事では、素材丸太は木材市場から仕入れ、製材所で板や角材に挽いた後、積み上げて自然乾燥し、数年寝かせてから家具等に加工する。
昔なら当たり前の工程だが現在では少数派に属している。
各工程ではつぎのことに気をつけている。
 まずは、運搬エネルギーを節約している。
素材丸太は市場周辺の山林から切り出された種々雑多な「雑木」が中心で、原則的に輸入した「外国材」は使用しない。
我が家と市場や製材所間の材料の移動距離は十数qほどの範囲内であるし、取引先も地元が中心。
 また、木材の乾燥に新たなエネルギーを使わない。
木材を積み上げるには土台を組むが、この材料はすべて家屋を解体した「柱」を譲り受け釘を抜いて使う。
これまでに再利用した柱は二百本を超えている。
雨を凌ぐために上にのせるトタン板も解体材、飛散防止の重石は古タイヤ。
乾燥エネルギーには「太陽」と「風」のみを使う。
 さらに、木材の加工で生ずる「切り屑」を活用している。
大きな切り端は風呂の湯沸しや、居間と作業場の「薪ストーブ」、台所の「かまど」の薪となる。
薪を積み上げる作業と、風呂を沸かすのは小学一年と三年生の子供の仕事である。
我が家は借家で、元は灯油焚きの風呂釜だったのだが、家屋の解体で出てきた古い薪焚きの釜を譲り受け、水漏れを修理して使っている。
薪ストーブは外国の鋳物製のものが性能は良いのだが輸入にエネルギーを使う。
そこで、国産の鉄板製の薪ストーブに改良を施し、性能を鋳物製のものと同程度にまで高めたものを使用している。
改良に関する情報は田舎暮らし情報誌を通じて全国に公表した。
かまどは「時計型ストーブ」を土間に据えて炊飯等に使っている。
 木を加工すると切り端のほかに「おが屑」と「カンナ屑」が出る。
どちらも堆肥にして野菜の肥料となるが、おが屑は細かいので微生物で分解できるが、カンナ屑は分解に時間がかかるために「カブトムシ」の力を借りて堆肥化する。タイミングが決め手になるのだが、メスが産卵する時期にカンナ屑を畑に積み上げておくと、翌年には大きな幼虫が数百匹誕生して、すべて「糞」に変えて微生物が分解しやすくしてくれる。
 生活資源では、「生ゴミ」に加えて、「し尿」もひしゃくで汲み取って堆肥に混ぜ合わせると、微生物の栄養源となって木屑の分解を促進し野菜の肥料成分にもなる。
以前は、畑で使う肥料は鶏糞を主に使用していたが、『鳥の糞を購入して、自分のし尿は金を出して引き取ってもらうのは変だ』と気が付いた。
バキューム車の替わりに一輪車と桶で運搬し、堆肥の山が処理業者の浄化装置に替わって分解処理する。
堆肥には、簡易浄化桝の汚泥や雑草を草むしりしたもの、木の焼却灰など微生物の住みかになるものや、微生物が分解して作物の養分となるものなら何でも入れている。
 家屋は築九十年ほどの木造だが冷暖房にも工夫している。
氷点下十五度は珍しくない地域だけに暖房は重要だ。
昔の家は天井が高いので元の天井の下に隙間を空けてもう一つ天井を設置して二重天井にした。
他の外気と接する面もすべて、間に空気層をはさんだ二重構造となるように建具や床材を改修し、建具も隙間を一ミリ以下に調整した。
その結果、小型の薪ストーブをじわじわ燃やすだけで室温は二十二度ほどを保っている。
外壁に断熱材は一切無く、窓にぺアガラスを使わなくても断熱性は十分だし、薪ストーブは部屋の空気を吸い込んで外に煙を排気するので適量の換気性を有している。
 夏は、朝晩は涼しい地域でも、日中はやはり暑い。
西面に七間 (約13m)にわたってガラス戸が入っているために西日の影響はすさまじい。
そこで、ガラス戸の外側に一枚目のすだれをたらし、屋根の軒先に二枚目の短いすだれをたらした。
二枚目を離したので通風性を確保できるし、太陽の照射角との関係で短いすだれでも十分に遮光できる。
西日の来る方向に樹木を植えたり、再利用の井戸ポンプで池の水を汲み上げて打ち水をするなど、西日対策には特に気を使っている。
また、屋根はトタン葺きで断絶材が一切使っていないので太陽熱を遮ることは難しい。
そこで、囲炉裏を焚いていた昔に使っていた屋根頂上の通風孔を復活させ、また、切り妻の屋根の両端に開口を設け、さらに、軒と桁の間の隙間から外気が流入するようにした。
この結果、屋根内部の温度差で自然通風が生じて、熱気が外部に排出される構造になった。
 今後は、屋根を太陽光の反射効率を上げるために銀色に塗装したり、西日の遮光に利用している朝顔に替えてキュウリやカボチャを育ててみようと思っている。

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古道具

再生した道具

   道具や機械は、使われなくなった途端に「クズ」という総称に名前が替わってしまう。 しかし、持てる能力を使い果たさずに、クズ呼ばわりされては、それを作った者、職人として使い続けて来た者にとって、無念であると思う。 当の、道具や機械自身も、言葉こそ持たないが、大いに不満が残ってしまうであろう。物を擬人化して感傷に耽るつもりは毛頭ないが、 使えるものを使わないでは済まさない、という気持ちに引っ張られて、在り処を探し出し、手入れをし、仕事で活かす努力をしている。

トビ 山での伐採や出し、貯木場や製材所などで丸太を扱うときに使う。 写真左からキリントビ、小トビ、中トビ、大トビ。 キリントビは、近在の伐採師が廃業したので、有償で譲ってもらった。 小トビは、廃業した木工所を解体して出た廃材から拾い出した。 中トビと左の大トビは、近所の山持ちが、「使ってくれ」ともって来た。 右の大トビは、借りている家の土蔵から出てきた。

ヨキ
伐採や薪割り、杣などの広範囲の作業に使われる。作業の目的、使われる地域性によって多くの種類がある。 写真左はハビロ小、ハビロ、はつりヨキ厚・薄。写真右は、切りヨキ、切りヨキ鞘付き、割りヨキ四種。
 ハビロは、近所の亡くなった木挽きさんの使っていたものを譲り受けた。杣が丸太から角材を削りだす際に使う道具で、玉鋼でできている。
 はつりヨキは、大工が主に使うと聞いている。古民家の解体で出たもの。
 割りヨキは、それぞれ重さと厚みが違い、割る木の種類や太さによって使い分ける。 近所の山持ちからもらったものや古民家の解体で出たもの、頭だけ鉄くずとして捨てられたものなど。

カワムキ  皮付き丸太の表皮をはがす道具。杣や木挽きが丸太から角材を削りだしたり、板を切り出したりするときの、墨付けの前処理作業に使った。 現在は、丸太や耳つき材の皮むきに使っている。上の写真左側は鎌形で、押しても引いても使える。右側は刃が両端で支持されている形だが、使い分けはよく分からない。
 鎌形は、古民家の解体現場から拾い出したもの。節の多い丸太の場合は、節を避けて作業するのに都合が良い。
 両端支持形は、小さいものは近所の山持ちが持ってきたもの。大きいものは、古民家の解体現場から拾い出したもの。

草刈刃のリフォーム 草刈り刃   最近では草刈りに使われる刃物は「チップソー」が一般的になっている。森林組合の山林作業でも作業者の多くがチップソーを使うことが多くなっているようだが、チップソーの欠点は、石に当った時にチップが外れてしまうことだ。チップの外れたチップソーは『鉄クズ』となって使えなくなってしまう。しかし私は、友人の森林組合の作業員が使い終わった刃を貰い受けて「八枚刃」の草刈り刃にリフォームしている。新品の八枚刃を購入する必要がないばかりか、鉄屑となるはずのチップソーが姿を変えて、もう一働きもできる。
 同様に、石に当たって刃が飛んでしまった八枚刃も、刃を作り直せば一回り小さくはなるが十分に使える。 



木工機械  家具などの木工品を作る際は、木工専用の動力機械を使用する。 基本的な機能は、大工が使うものと変わらない。そこで、廃業した大工が、放置していた木工機械を分解整備して再生し、使用している。
 左の写真は自動カンナ盤で、引き上げてきたときは、さびた鉄の塊であった。
 右の写真は、元は昇降盤。やっと動く程度だったものを素材として、多様な切削、研削加工に使える多機能加工機に改造したもの。

古時計  カチカチと音をたてて時を刻む時計は、今では「アンティーク」という呼称で、飾り物として扱われることが多いようだ。 我が家では、玄関と居間に古時計をかけている。
 左の写真の縦型の振り子時計は、むかし木挽きを営んでいた家で、鋸を譲っていただいたときに、仕舞ってあったものに目をつけ、 欲しいのだったらどうぞということで、いただいて来て修理して使っている。昭和初期の製造のようだが、かなり正確に作動している。
 右の写真の丸型の時計は、築三百年の庄屋だった古民家を解体したときに、ゴミとして捨てられたものを、修理して使っている。 時計の修理は、木工機械のようなゴッツイ物とは勝手が違い、大変に苦労している。最初に分解した際は、 爆発して(時計を分解したことのある方は分かると思う)ゼンマイは伸び切り、歯車は四散し、原型に戻すだけで多大な労力を要した。 かれこれ四年の歳月をかけた今でも、分解して調整し続けている。我が家の古道具で最も手のかかる難物だ。

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