−−露天風呂しかない湯治場−−
旧市内から国道151号線を阿南町方面へ向かって南下する。開善寺に近い上川路の交差点を通り越し、更に南下する。この辺りの国道は交通量が少なく走り易い。間もなく天竜峡入口の三叉路の着くが、国道を直進する。ここから湯里湖まではおよそ2km、国道は曲がりくねった坂道となるが5分とは掛からない。坂を下って阿智川に架かる万歳大橋に差し掛かる。この橋の手前左側に湯里湖がある。道路脇の看板が目印である。建物の前庭が駐車場になって居るがそんなに多くは駐車出来ない。国道の右側には広い駐車場があるが、国道がカーブしているので、国道を横断する際には車に注意を要する。
建物の中ほどに一般民家の玄関とあまり変わらない入り口がある。入り口を入ると左側が事務室となっており窓口で入湯料を払う。玄関には野菜、くだものなど商品が並べられており、温泉場の入り口とは思えない。狭い廊下の壁に掛けられた男湯、女湯の掛札を見て、ここは温泉場だなと思う。
まずは、湯に肩まで浸かってみた。足を前に投げ出し尻で身体を支えると肩まで湯に浸かる丁度良い深さである。湯は濁りがなく、自然石を敷き詰めた浴槽の底は温泉に含まれている硫黄分で少し黄色味を帯びていて気持ちの良い肌触りである。底に敷き詰めた丸い石の文様が湯の波に揺らいで見え美しい。しばらくぼうっとして居ていると、大きな手提げ鞄を二つ提げて白っぽい肌の男が入って来た。何をするのかなとじっと見ていると、浴槽の隅の飲める源泉が出ている所に持って行き、ファスナーを開け2リットル用のペットボトル取り出した。それに源泉を詰めている。そうか、持ち帰って飲むのだ。
−−「ゆり子」さんは無料−−
つい最近、近くの温泉で見知らぬ客から「この辺りでは、飯田の湯里湖が最も泉質がいい」と教えられた。そこで「湯里湖」(ゆりこ)に行って見た。
以前から「湯里湖」の場所は知っていたが、入ったことはなかった。「湯里湖」と書かれた文字からは湖を連想してしまうが、そうではない。「湯里湖」は新聞やパンフレットに寄れば、「いいだ温泉湯里湖」と云い湯治入浴施設である。飯田市内には、幾つか温泉が有るが「いいだ温泉」と名乗って居るのはここだけだ。
掛札に従って戸を開けると脱衣所があった。そには脱衣かごが幾つか置かれており、コインロッカー型の脱衣収納棚もあった。まず100円玉を用意して脱衣しはじめた。すぐ後から入って来た方が隣でぼそぼそ云っている。「ここのは100円が戻って来ないのか」。日帰り温泉や銭湯の中には、100円が戻って来る所もあるが、ここのロッカーは戻ってこない。
風呂場に入って驚いた。ここには露天風呂しかない。普通の浴場には、室内浴室があり、それに付属して露天風呂があるが、ここは室内浴室がないのである。この時期、露天では寒くて長く入っていられない。そこで露天風呂にビニールの覆いを掛けている。従ってビニールハウスの中で温泉に浸かっているみたいである。外が眺められないのは悔しいが、程良い湯加減を十分に楽しめる。
身体を洗う洗い場も左右二カ所にあるが誰も座っていない。誰もが肩まで湯に浸かったり、腰から下のみ浸かる半身浴を繰り返して居る。浴槽の奥に少し高い所にもう一つ浴槽がある。ここに入っている二人はさっきからずうっと肩まで浸かりっぱなしである。まだ数人は入れるスペースがあったのでそこへ行ってみた。ぬるい。しかも木の底板が白っぽく変色している。そうか、これは源泉だ。ここなら何時間でも入って居られる。
先に入って居た二人から話しかけられる。会話の中で二人にどこから来たのか聞いてみた。一人は岡崎からでもう一人は湯谷からだと云う。いずれも愛知県からである。ここはそんなに有名なのか?。
確かにここの泉質はいい。飲むことができ、浸かってもさらっとしていて気持ちがいい。浴びたり飲んだりしていると病が治るような気分になって来る。
湯から上がって連れ合いはまだかいなと廊下をうろうろしていると、こちらへ来て休めと男主人から声が掛かった。事務室も隣が休息室になっており既に数人が横になっていた。連れ合いが出て来たので二人して座卓に向かい合って腰を下ろし、パンフレットが欲しいと主人に云うと新聞のコピーを持って来て温泉の入り方の説明を始めた。上方漫才かお寺の観光案内かどこかで聞いたことがあるような抑揚のない早口の説明を一通り聞かされた。話しているうちに古田と云う苗字と妹の名前が出てきたのには驚いた。世間は狭い。
なお、「湯里湖」の入湯料は600円であるが、「ゆりこ」と云う名前の方は無料で入れます。