越百山(こすもやま)・・2,613m。中央アルプス南部に聳える山。

 伊那谷から望むと、この山は仙涯嶺の稜線が終わり、南に平坦な稜線に切り替わる中に位置する比較的なだらかな山様をもっている。麓から望む山の感じは穏やかであるけれども、この山へ望む飯島町からの登山道は、非常な悪路であり、崩落・渡渉・クサリ・はしご・ワイヤー・ガレ場など、険しい状況となっている。

CGは国土地理院刊行『数値地図50mメッシュ・日本U』及び「カシミール3D」を使用して作成しました。
 平成8年8月4日(日)、飯島町民による「越百山」への町民登山が行われた。山岳遭難防止対策協会及び山岳ガイド・地元山岳会員の方々が隊長・サポート役となり、ともかく万全の体制をとる中で実施された。
 何分、経験も様々な集団登山でもあり、誰もがまわりに迷惑等かけないよう、怪我などしないよう、通常以上に気を使い、隊列を乱さぬよう写真も休憩時間以外は撮らないというように私自身努めたため(本当は写真をしっかり撮ってきたかったのですが我慢我慢で)、あまり画像(すべてデジタルカメラなので画像はよくありません。)はないけれども、ここにその登山の様子を紹介することにより、併せて越百山の紹介を少々したいと思います。それではどうぞ。


 4日朝、5時15分、飯島文化館前の駐車場に集合。総勢33名の登山隊構成となりました。
 町で用意していただいたバスに乗車し、一路与田切川の源流「中小川」の登山口へ。バスが渓谷に落ちはしないかというようなガードレールもない、下を見ると恐ろしいぎりぎりの場所などをすり抜けてどんどん奥にはいっていきました。本当にスリル満点の場所もありました。登山口に無事車が着いてホッとしたものでした。
  途中までの登山道は、今年のこの登山のために笹刈りなどで整備されてあるらしいのですが、途中からは全くの整備なしの状態のはず?・・のこれからの登山道。(私は以前1度だけ伊那市の桂小場から飯島町の千人塚まで中央アルプス縦走の際にこの中小川を下山に使ったのですが、結果的に当時の記憶はあまり残っていませんが、それでも土砂が流れて道が消えたり、鎖が届かなかったりで悪戦苦闘だったのを覚えています。)

 バスを降りて柔軟体操をし、山岳遭難防止対策協会・山岳ガイドの方々のサポート体制のもとで、6時13分出発しました。

 この中小川沿いの登山道は地元でも「悪路」で知られています。残念ながらこの登山道は正直言って他の中央アルプスの登山道なみには整備がされていないのだから、崩落有り、ガレ場あり・・は当然。(左写真参照)かき分ける笹ヤブもあり、恐ろしい笹ダニも・・??。
 しかし景色は非常に変化に富み、三段の滝・乙女の滝・相生の滝・飛竜の滝などの素晴らしい滝が見られ、渓谷美、その点のみではなかなかの登山道でもあります。しかしいずれにしても初心者やこのルートの未経験者には責任を持って「薦められない」コースでもあるというのは事実でもあり・・・。
 登山道は全体的に「無駄のない?」高度をどんどんかせぐといったコースとなっている。後半は全くその通りのきついコースになっています。

 運の良いことに、源流途中では「サンショウウオ」も見られました。なんとも小さいかわいらしいサンショウウオでした。水は本当に澄み、冷たい自然そのままの水だからこそ生きていられるのでしょう。
 又、大岩盤の割れ目からコケを通して滴る文字通りの「岩清水」もあり、しっかり飲んでしまいましたが、そうした爽やかな場面に出くわすのも楽しみな登山道です。こんな場面を写真に撮っておいたら、と帰ってきてからやはり後悔してしまった。
 乙女の滝・三段の滝を経ての「カモシカ落とし」などという名の付けられた崩落箇所の登りは、下の人への落石などに本当に気を付けて登る必要があります。また途中のクサリ場・ワイヤー・梯子などは古いものもあり、十分注意して歩かなければなりません。川の水が多いときであれば完全な渡渉となる場所もありますが今回はたまたま水量が少なかったため、それほど気にせずに川を横断などできました。

 さすがに山岳ガイドの隊長さんが先頭のため、全員がばてない程度の歩調で登っていきます。(もっとも私たち後方では止まってしまうことも度々であったけれども。)この一気の登りを出ると、そこは南越百山と越百山の中間の稜線に出ます。


(越百山頂上より南越百山を望む)

 本当にあとわずか15分もかからずに頂上になります。

 12時20分頂上着。岩場ではなく全くの平坦な砂礫状態の頂上となっていて、ここからは仙涯嶺・南駒ヶ岳の眺めが素晴らしいのです。
 写真では小さい感じに写っていますが実際、ガスの切れ間から見たその両山の勇姿・光景は圧巻!。伊那谷の麓から見る姿よりも荒々しい姿を見ることができます。

(越百山頂上風景)
(越百山頂上から仙涯嶺、及び左奥に雲のかかる南駒ヶ岳を望む)
 頂上には35分ほどの滞在。

 いつもどおりグレープフルーツなどを食べた後、参加者全員での記念撮影も。
 やがてガス・風も出てきて、しかもまだこれから長い下山が待っているため短時間で木曽側に下山を開始せざるを得ない。
 中央アルプスを木曽谷側へ降りるのは私はこれが初めてでした。楽しみでもありましたが、登り以上にこれからがなんと長く感じたことか・・!

(越百山頂上より越百小屋(円内)を望む)

 越百小屋には1時40分着。ここのご夫婦そしておばあちゃんがなんとも親切な感じの方でした。奥さんが、おそらく天水であろう貴重な水で、皆にお茶を入れてくださった。小屋はそんなに大きくはないけれども、頑張っておられる様子。明るい方々でした。

(越百小屋より越百山頂上を振り返る)

 ここで20分ほど休み、出発。ここからの須原への下山が本当に長かった・・・。ひたすら樹林帯をくだるのみ・・・。しつこいほどの長さで何か変化がなくて、参ってしまう。途中「おこじょの平」(おこじょはかわいい山の動物です。)や「ちょっとの平」(本当にちょっとしかなかった。)などユニークな鞍部や平坦地がありました。
 木曽側は比較的きれいに整備されてある登山道となっていました。ただただひたすら降りて、林道に出、40分ほど広い道をまたひたすら歩を進める・・・。やや惰性ぎみ?にもなってしまったり。
 そして午後5時20分、今朝沢橋の駐車場につき、町のバスが見えた時にはホッとしました。バスの運転をされる方が、遅れていた私たちを迎えるために途中の林道まで長い距離を歩いて来て下さっていました。感謝。そしてバスに乗車。
 木曽谷のきれいな夕方の狭い空を眺めながら、しかし道路の渋滞が響き、19号線・中央高速経由で家に着いたのは午後9時前でした。(バスの中で配られた缶ビール・・、スーっとしたけれども、弱った体??にすぐまわってしまい、まいってしまった。)
 長い1日であったけれども、充実した越百山そして中央アルプス越えとなりました。