弥太夫流 ski theory
頭で滑ってうまくなる!
リンクきれを修正(2010/4/2)

■こんにちは。みなさんスキーを楽しんでいらっしゃいますか。
40代半ばの中年になってから、スキー面白さにはまり込んで、現在に至っています。
ご参考になればと思い、練習の中で発見したことなどを、エンジニアらしい切り口でく
ご紹介するコーナーを作ってみました。
少しでも上達の足しになれば大変うれしいです。

■下記項目は、2004シーズンに記事にしたものです。
2005シーズンの記事は、都合で ここに記載しています。

■スキーに関する技術ノートは、2006年、2007年と増加しているのに、
記事にまとめる時間がなかなかもてなくなってきました。
そこで、気楽に思いつくまま書けるかもと期待してBLOGをスタートしました。
お雪にはまって、さあ大変!



項目

10:リンゴ型?洋ナシ型?
09:谷回り
08:回転半径の解析
07:滑走中の回転半径
06:回転半径R
05:カービングスキー
04:首の話
03:円軌道
02:ターンはブランコ
01:物理が武器だ
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 11: 足裏の形から

内足の意識について記しておきたい。

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 10: リンゴ型?洋ナシ型?

谷回りと山回りのバランスについて考えてみたい。

谷回りと山回りを均等に回って1ターンを描くと、半円を描く。
『丸い弧を描く』ことは、レッスンを受けるとき、
よく指導されるポイントだ。
しかし斜度がきつくなったり、高速で滑走するときに、
谷回りと山回りを、均等な弧で回ろうとすると、
どうしても山回りで大きなスピードが出て、
遠心力はグンと大きくなる。
その結果、荷重集中が山回りで過度になり、
スキーがずれやすくなる。
実際に雪面上の軌跡は、山回りがしもぶくれになった
洋ナシを切ったときのような下が膨らんだ形になる。

荷重をターン中に大きく変動させない方が、
安定性、スピード、快感性は増す(と思っている)。

だから、大きく鋭く回る部分は谷回りでつくることが
ポイントだと思う。つまりリンゴを切った断面のように、
肩の部分で回転弧を作って谷回りを終わらせ、
尻の方で直線的に走って、荷重を増やさないのが
得策だと思う。

リンゴ型で滑ると、常に一定(に近い)遠心力が得られて、
谷回りでも、雪面を回転外側に押付けながら滑ることができる。
つまりいつでも雪面を押し続け、感覚的には
雪面に張り付いた(這いつくばった)快感を味わうことができる。

リンゴ型で、滑るには?
そう!
谷回りの早い段階で、足の傾斜を出し、
スキーをたわませること!

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 09:谷回り

カービングスキーで滑る際に、
谷回りは一番の繊細な部分だと思う。
切替から谷回りに入るところで、
一瞬のポジション遅れや大きな抜重があると、
スキーはたわまず真直に走って、
なかなか谷回りが始まらない。

こうなると、勢いついた山回りで、
コントロールしようと足を傾斜させるから、
一挙にスキーがたわんで回ろうとする。
その結果、なおさら遠心力が大きくなり、
荷重が集中して板がズレたりする。

デモの滑りを見て、うまいなと感じるのは、
何から来るのだろうか、と考えたことがあった。
結論は、切替から谷回りへの運動の合理性、
的確性、コントロール性にあると勝手に結論つけている。
谷回りでは、足の傾斜が60°位まで出ている。
条件次第では70°にもなる。スネが、雪面に平行になるくらい。
なかなかここまで上体の先行をとり、かつ荷重し、
スキーのたわみを作るのは容易ではない。

カービングスキーの特性から導かれる
合理的な滑りについて調べていこうと思う。

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 08:回転半径の解析

準備が整ったので、いよいよ解析である。

問題の設定は、右図で、
たわんだカービングスキーが
雪面上に描く円弧の半径を求めることだ。

右図で、スキーのテール側から前後軸に沿って、
スキーのたわみを眺めた状況を考える。
下の図では、一番上の絵が、抜重の状態、 中間の絵が、荷重されたわみを持った状態を表している。

簡単に考えるために、スキーのアーチベント
(板を横から見たときのセンター部の反り上がり)
を無視して、無荷重のときはスキーは平板であるとしよう。

抜重状態の絵で、いちばん幅が広いところが
テール幅およびトップ幅で、真ん中で梨地になった
幅の狭いところがセンター幅を表している。
足のバンク角(傾斜角)をΘとしている。

荷重した状態の図を、ご理解いただけるであろうか。
抜重状態では雪と隙間ができていたセンター部は、
荷重によりたわんで雪に接している。

一番下の絵は、この時のエッジ部の拡大図だ。
雪面上に描かれるエッジング円弧のくびれ幅
「ラージS」は、カービングスキーの設計形状の
くびれ幅sと簡単な関係にある。
三角関数の関係を思い出していただければ、

   S=s/cosΘ

またこの絵から、足の傾斜が出るほど、
「ラージS」は大きくなることが分る。
つまり雪面に噛み込んだエッジングの円弧の
回転半径は、足の傾斜で、どんどん小さくなる!
ということを表している。

6項でくびれ幅から回転半径を
求める式を紹介したが、
このsの代わりにラージSを代入すれば、
そのまま雪面上に描かれるエッジング弧の
回転半径になるわけである。

   R=L*L*cosΘ/(8*s)

さて、具体的に例題で計算してみよう。
Fischer S 600を例にとり、さまざまな
足の傾斜角Θで、回転半径がどのくらい
変化するかを計算してみる。

足の傾斜角Θ 10° 20° 30° 40° 50° 60°
回転半径(m) 10.5 10.3 9.7 9.1 8.0 6.7 5.3

傾斜角Θが大きくなるほど、急激に回転半径は小さくなり、
60°の傾斜が出せる技量があれば、回転半径は5.3mと
板の設計上の回転半径の約半分となる。
すなわち急峻に切れたカービングターンとなる訳だ。

この表は、よく眺めると宝の山である。
その内容は、谷回りのつくり方から、
内足のズレの問題など、
カービングスキーにまつわる
いろいろな問題が見えてくる。
その解説は、また次回。

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07:滑走中の回転半径

たとえばFischer S600を例にとって、
板の全長1.6mと回転半径10mの比を、
想像していただきたい(右図)。
とてつもなく回転半径が大きいと思いませんか?
こんな大回りはゲレンデを占有しないとできない。

実感としても、もっと急峻に切れて回っている。
雪の上に残ったシュプールを見ても
5m前後の回転半径ではないだろうか。
そのことを物理的観点(弥太夫の本領発揮?)から説明する。



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 06: 回転半径R

カービングスキーを、前後軸回りに
傾斜した状態(ターン中、足が側方に出ている状態)で
荷重したとき、円弧形状になったエッジ全体が
雪を捉えることを、前項で述べた。
このエッジ全体が作る円弧半径は、
実は乗り手のコントロールにより変えられる。
しかも設計された板の回転半径Rより小さくなる。
このことがカービングターンの切れ味と関連する。
その説明に入る前に、下準備を少し。

まずスキー板を購入する際に、だれもが
諸元(寸法などの仕様)を読むはずである。
いちばん気にするのは、長さLと回転半径Rだろうと思う。
ついで、トップ幅Wtop、センター幅Wc、
テール幅Wtailを見る。
くびれの強い板の場合は、回転半径が小さく、
そしてトップ幅やテール幅に比べて、
センター幅が細くなる。

この回転半径Rは、近似計算ではあるが、
下式を使って自分で計算できる。
   R=L*L/(8*s)

ここでLは、くびれ形状になっている有効なエッジ部分の長さ
(カタログ記載の全長より短い:エッジング長)、
sは、くびれ幅でトップとテールの最大幅を
結んだ線を基準にして、
センター部で中心線側にくびれている深さである。
式で表現すれば、
   s=((Wtop+Wtail)/2-Wc)/2

下表は、昨年度モデルの回転半径を、
試しに諸元より計算してみたもの。
エッジング長Lは、どの板でも全長から20cm短いとした。
(トップで10cm、テールで10cm短いとザックリと仮定)

この表から、カタログの回転半径にほぼ近い数値が、
上式で求められることが判る。

スキー カタログ全長/エッジング長L(cm) くびれ幅s(cm) カタログ記載の回転半径R(m) 計算による回転半径R(m)
Fischer S600 160/140 2.33 10 10.5
ATOMIC arc Conviction 160/140 2.15 11.5 11.4
Salomon DEMO10 3V Pilot 165/145 1.90 14 13.8

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05:カービングスキー:

カービングスキーの登場により、
合理的な運動要素は従来のものとは
全く異種のものとなり、
滑り方そのものを変えてしまった感がある。

まず形状が、特異である。
トップとテールは幅広で、
体重が乗る中央部の幅が狭くなり、
くびれたような形だ。

スキーの板が、前後軸回りにバンクした
状態を考えよう。つまりターン中、
足が側方に傾斜している状態だ(右図)。

従来型のスキー板は直線的な形状をしているので、
前後軸回りにバンクさせても、
トップとテールの接雪点を結んだ線上に
中央部の接雪点が来る。
バンク角が変化しても、基本的に
スキーのトップからテールまでの
雪にエッジングしている跡は直線のはずである。
(むろん、ブーツ部分に体重がかかるので、
多少雪にめり込みやや曲線にはなるが。)

カービングスキーは、センター幅が
狭くなっているため、
バンクしたときの接雪点は、
トップとテールだけになる(下のほうの図)。
センター部は雪に接しない。
(内足に荷重しないでカービングターンをすると
2本線のシュプールになるはず)

一方、バンクしてかつ荷重する時、
トップとテールの接雪点を結んだ線に対し、
ターン外側にはみ出たところに
ブーツの下の接雪点が来ているはずだ。
つまり、トップからテールまで
全エッジが噛み込んでいながら、
そのエッジング跡は円弧を形成する。

これが、スキーをずらしていないのに、
鋭い円弧を描ける理由だ。

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04:首の話:

唐突な感じがするけれども、首はとっても大事という話。
ターンは円錐振り子に沿って体が移動し、
雪面に、きれいな円弧が描かれる、というのが
カービングターンの理想形である。
この円軌道を意識するかしないかでは、すべりの安定性が
まったく異なる。
スキーに限らないが、スポーツで体の安定性を維持するには
首の方向がとても重要である。
特に左右に傾斜が出ない首の立て方が決め手になる。
それは多分、首を垂直に立てたとき、
体の平衡感覚が最も、敏感になるためだと思われる。

カービングターンをしているとき、
円軌道を意識することと、首を垂直に保持すること。

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03:円軌道:

3次元的には円錐運動しているターン運動だが、
スキーが雪面に描く軌跡は、半円となる。
前の半円が終わるところで、切り替え動作があり、
次の半円に滑らかにつながっていくというイメージだ。
特にカービングスキー板の性質から、
滑走中は常に回転状態にあるのが自然であり、
かつ切れて速いということになった。

ノーマルスキーや、カービングスキーでも
スキー技術が初級段階では、
(1)ターンは方向を変える手段
(2)滑走の基本は斜滑降
という滑り方に終始する。
その理由は、スキーは直進する道具であり、
スキー技術とは斜滑降で斜面を降りてくるもの。
ゲレンデの端まで行ったら崖から転落するか、
フェンスに衝突するから、
やむなく方向転換するのだという滑りになる。

しかし、カービングスキーが普通になった今、
その性質から
(1)斜滑降という滑りは消えた
(2)いつもくるくる回っているのが常態
という滑りとなった。
むしろ、カービングスキーを履いて
直進するのはほとんど不可能となった。
(無理にやると非常に不安定で危険でさえある)

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02:ターンはブランコ

上級者の滑りを後ろから眺めていると、
左右にゆれる振り子のように、
下半身を振りながら滑走していることがわかる。
しかし正確には、上から観察すれば、
円錐振り子という運動である。
半周期ごとではあるが、
円錐振り子をなぞりながら
雪面上を円運動する。

実際には、雪面からの反力で
体重を支えているのだが
意識としては、あたかも上空の
ある固定点から伸びた糸で
自分の頭が拘束されている操り人形を
イメージすると滑りやすい。
ターン中の上体の傾斜にいろいろ悩むより
この糸の方向に上体をあずけて、バランスを取る。
スキーヤーはこの糸にぶら下がりながら
円錐運動しているブランコの乗り手である。

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01: 物理が武器だ

スキーがうまくなりたい、上達したい!
真剣にそう思い詰めたのが、すでに中高年の40代半ばだった。
スキーを履くのは、実は生涯で2度目。
初めてのスキー体験は20年前。
大学研究室の人に誘われて、いきなり蔵王の地蔵岳山頂に
登ってしまった。急斜面ありコブありと散々だった。
2度とスキーなんか履くものか!

しかし何か惹きつけるものがあるのだろう。
長野に生活拠点を置くようになり、きちんと練習しようと思った。
スキー経験も浅く練習量も稼げないハンディを負って
いかに効率的に上達するかが、まずぶつかった壁だった。

幸い職業が技術屋であり、理屈やら物理が好き
というところが己の強みであると気づいた。

スキーに本来魔法はない(はずだ)。
デモンストレータだって、物理法則に則って
滑っているに違いない。
物理法則に反して空中浮遊したり、
坂を上って行くなどということはないだろう。
要は、物理を意識して滑るか、
長年の鍛錬で体が物理を覚えているかの違いではないか?
運動法則にマジックはないと決め込んだ。

いかに物理法則でうまくなるか、
頭で滑る方法を記述していきたいと思う。

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