8、平和がみちあふれる郷土をめざして <赤須喜久雄の訴え>
上井(うわい)・下井(したい) いまむかし 8


8、おわりに

  私のつたない話をお聞きいただいているうちに、夜も大分ふけてまいりました。
  外もいちだんと冷え込み、雪が降ってきたようであります。このぶんだと、明日はだいぶ積もるでしょう。
  「故きを訪ねて、新しきを知る(温故知新)ということわざがありますが、私たちの祖先に思いをはせ、いまの時点でそれを真剣に考え、より前進の方向で守ってゆくことの大切さを教えられるわけであります。
  明日の仕事もございますので、今晩の話はこれにてひとまず終わらせていただきます。

しし追い

寄稿「観光開発と」水利権  林百郎法律事務所 弁護士 木島日出夫

  最近全国で、観光道路の開設、別荘地造成、ゴルフ場建設、などによる自然環境が大きな問題になってきています。長野県下においても、南木曽町に代表される水害、茅野・諏訪に代表される市民の生活用水の汚染と枯渇など、いわゆる「大規模観光開発」は、単に美しい自然が破壊されるということだけでなく、住民の安全な生活を破壊し、地方自治体に対し莫大な負担を与えるというように、私たちの日常生活にとっても重大な影響を与えつつあります。
  長野県環境保全課で、昭和48年5月31日現在で把握している県下のゴルフ場は、31ヶ所が造成中、または計画中とのことであり、これに別荘開発などを加えると「山紫水明」とうたわれた信州の山々は、大資本によって虫食いのように荒らされつつあると言うことができます。
  水源地域にゴルフ場や別荘が開発されると、その下流の農民の「水利権」に対する重大な影響が出てきます。
  一つは水量そのものがボーリング等により著しく減少するもんだいであり、一つは別荘などの雑排水により飲料水や農業用水が汚染されるという問題です。
  農業水利権は先祖代々から、農民が集団でその水を独占的に利用し、水利施設を維持管理するための労役に従事したり、金銭の負担をしたりしてきたことに対して認められる権利であり、このように権利にまで高められた農民の水利権を、他人は勝手に侵害することはできません。
  また農業水利権は、水を利用して生活してきた農民が、集団として持っている権利ですから、水利権を他に譲渡したり、水を観光会社に使わせたりする場合には、原則として全員の賛成が必要です。とくに最近の大規模観光開発によく見られるように、ひとたび水の利用を許してしまうと、水量が減ったり、汚染したりした場合にもその回復はよういではありませんから、事前に十分にちょうさをして、どのような影響が予想されるかを深く検討することが大切です。会社から出された資料をうのみにして、軽々と水の利用を許してしまうと、あとで取り返しのつかないこともよくあります。
  農業水利権は、部落全体の生活にかかわる最も大切な権利であり、祖先からの大切な遺産ですから「慎重が上にも慎重に」という態度が特に重要です。    (木島)

 

 あ と が き ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  この「上井・下井いまむかし」は、駒ヶ根新聞東伊那版に昭和48年8月17日
から12月までの5ヶ月間に24回にわたって連載されたものです。
   明治維新より20年も前の歴史の事実は、私の調査不足、また不正確な理解など
から、この一文がすべて正しいと思っておりません。ぜひともご指摘いただき、ご
指導とご鞭撻を心よりお願い致します。
   起工当時から今日までの経過などをお教えくださいました多くの方々、挿し絵を
書いていただきました新井善和氏(上赤須在住・タカノ労組副委員長)、印刷・製本
の馬場氏、それに刊行委員会の皆さんに対して、厚くお礼申しあげます。

                      昭和50年(1975)1月・赤須喜久雄

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〇赤須喜久雄 学歴・職歴・活動歴(省略)
○責任を持って推せんいたします (文略)
参議院 懲罰委員長  春日正一
党国会議員団総会長
○すいせんのことば (文略) 衆議院議員      林 百郎

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駒ヶ根の夜明けシリーズ・NO2上井・下井いまむかし =血と汗と涙の話=
著者・赤須喜久雄  発行・昭和50年1月(1975) 印刷伊那市ビジネスサービス

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 <◎ホームページに“いま”のせた理由
駒ヶ根市の竜東の東伊那・中沢の両地区も、この拙文発表後、土地 改良区が設立され、
基盤整備や水利の統合なども終わり、いまや地域 の団結と発展に向かって新たな段階
に入っています。
  地域新聞連載後、A4・44ページの小冊子を昭和50年1月(1975)1000部発行しました
が、改めて「水問題の過去の記録・資料として残しておきたい」…との考えからです。
ご意見などお寄せ下さい。

                                2009年3月(平成21) 赤須喜久雄


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