8、平和がみちあふれる郷土をめざして <赤須喜久雄の訴え>
赤須喜久雄・諸国行脚 奥の細道の巻 F

赤須喜久雄・諸国行脚「奥の細道の巻」・・・・・・< その1―F >

F  出雲崎 ・ 柏崎               <1988年(S63)11月17日〜19日>

【 村おこし事業の視察 】・・・新潟県の2つの村

      < 荒海や 佐渡に横たふ 天の河>

  AM5,00 自動車にて出発。長野市、豊野、直江津から北陸道に。米山SAで昼食。
  雲の間に“佐渡が見えた”
。 ・・・・・ 荒海や・・・の大きな石碑がある。 
  芭蕉はこのあたりから佐渡を見たのであろう。

  ≪ 1、めざすは新発田の北の “黒川村である” ≫

  新潟から一般国道で北へ。芭蕉もここを通り出雲崎の方に行った。
  この黒川村は、昔、
黒い川が流れるほど石油が湧出したことから、「黒川」の地名がついたという。われわれは
 
大和時代、天智天皇に「燃える土、燃える水」を献上したのはここからである。
  冬は雪が多量に降り積もり、村全域が「豪雪地帯対策特別措置法」の適用を受けている豪雪地帯である。また、過疎法の適用も受けている。
  リゾート開発、村おこし、国際化という言葉がはやっているが、この村では30年くらい前の1962年(S37)役場の職員をドイツに1年間、長期に海外派遣した。
  以来、毎年若い人が順番で1年間の長期研修に行っている。昨年は、アメリカのハム工場で研修し、現在、村営ハム工場でリーダーシップを取っているということだ。
 S40年代のはじめまで、毎年冬になると1000名をこえる出稼ぎ者が都会へ出て行ったそうだ。若者が都会へ出て行く流れを止め、若者に働く場所を確保するために
、黒川村は他にモデルを求めず、自主独立で村おこしをやってきた。

@  観光を主体にして、特産品作りにも力を入れている。
A  すべて村の直営で、雇用の場を作り出している。
B  海外研修など人づくりにきわめて熱心、
C  いろいろな枠にとらわれない積極性。  ・・・ などである。

● もともとは観光地でもなく、普通の農村だった。 ところが、今では ・・・

☆ 2つの村営国民宿舎 (グランドホテル、パークホテル)
☆ 村営ホテル (ニュー・パークホテル)
☆ スキー場9ゲレンデ、14コース、12基のリフト、ナイター設備
☆ 産物の直売レストラン (グリーンハウス)
☆ バーべキュー広場のある (レストハウス)
☆ 地元産のそばの手打ちを食べさせる (そば処・みゆき庵)
☆ 日本中の珍しい昆虫や蝶を集めて展示している (昆虫の家)
☆ 炭焼きを体験できる (炭焼き小屋)
☆ 動物や乗り物を集めた (樽ヶ橋遊園)
☆ 青銅製では日本一の (胎内観音)
☆ 村の歴史や生活をしのぶ (郷土文化伝習館)
☆ その他 テニスコート、射撃場、体育館、トレーニング室などのある各種のスポーツ施設、
     ・・・ などがある。

  人口、6500人のこの村へ、年間に訪れた観光客は、S62年度90万人であった。S63年度は100万人を目標にしているそうである。
  我々は、村営の1泊2食・
12000円のニューパークホテルに泊まった。
  村が農家に委託して生産した、
牛肉300gのステーキのフルコースだ。
  もちろん、ここのコックもウエイトレスもみんな役場の職員である。シェフは、フランスへ1年間研修に行ってきた人である。セオリーどおりに料理が運ばれてくる。
  軽い音楽が流れ、あちこちのテーブルでは楽しそうに食事をしている。ワインの酔いが心地よい。奉文氏が、ドイツ人のお客と話を交わしている。
  “お金の問題ではない。このステーキを食べに来たのだ” ・・・ と、さらに300gのステーキを追加した。
この追加分だけで5000円。腹も気分も最高!!!

≪11月18日(金)≫
  村営ホテルをたち
ハム工場に寄った。1日、豚2頭をハムに加工していると説明があった。ここでの生産品は、ホテルなどの村の施設で使われたり、お土産として売られるという。隣には漬物の加工場があった。
 
畜産団地にもいってみた。牛や豚の子取りは村で責任を持ち、肥育を農家に委託するそうだ。とにかくこの村は、村営施設の拡充によって雇用の場を確保し、村おこしを図っていた。
 
黒川村の職員数は170人。そのうちの一般職は106人残りの64人がホテルなどの施設職員で、村の職員の三分の一を観光で支えていた。

≪ 2、新潟県北魚沼郡 ・入広瀬村  ・田中角栄の金城湯池 ≫

  また、もと来た道を戻り、次の訪問地の“入広瀬村”に向かう。長岡の近くでは白鳥が群れで飛んでいた。長岡から関越自動車道に入り小出ICでおりる。
 
入広瀬村(いりひろせ)は豪雪と田中角栄で有名である。角栄が、この村で70%もとったことがあるそうだ。
  役場の前にはついこのあいだ降った雪が山になっていた。冬は平均3m50cm位、いつも積もっているという。
  この村の若者定住のための努力はたいしたものであった。私達がこの村を視察する目的は、@、若者定住のための村づくり・・・。A都市なみの生活環境・・・全戸水洗化。   ・・・・・ である。

@ 若者定住のために ・・・ 働く場をつくる。スポーツ施設。農業基盤整備に力を入れていた。
  ☆ 工場団地の造成と企業誘致 (製薬と鉄鋼関係)
  ☆ 山菜加工場・売店・山菜会館建設(年間3億円を超す地場産業)
  ☆ 木工品加工場。老人生きがいセンターの名称で建設。
  ☆ サイクリングターミナル(宿泊定員・90人)
  ☆ 淡水魚水族館   ☆ いわなの家  ☆ いわなレストラン  ☆いわな公園
  ☆ 地域バイタリティー事業(村で工場を作り、企業にリースする)2棟。
  ☆ 下請けセンター
  ★ 「若者の砦」総合スポーツセンター。体育館5ヶ所に建設。
  ★ 全天候型テニスコート・15面。7〜9月で1万人が使う。

  ○ 農業基盤整備も終了し、「こしひかり」をつくっている。いま、すべての田圃の入口まで舗装をしているという。

A 都市なみの生活環境整備
  “下水道の建設は時代の要請である”と建設に取り掛かり、今では86%の村民が使っている。各戸処理を入れて
全戸水洗化の日も近い
  驚いたことに、家の中は自己負担であるが、公共工事部分の負担金はとっていない。東京の下水道の普及率は82%であり、
“首都よりも環境水準は高い”と村長は自慢していた。(日本の下水道普及率=39%。S62年度末・長野=21%

≪ ・・・谷川連峰直下の明るいトンネルを抜けると、
                そこは白銀のユートピアの里であった。≫

  企画観光課係長の案内で村内をひとまわりしたが、面積が駒ヶ根の1.7倍(272ku)あるこの村の一番奥に、<信濃川水系フィシュハウス・水族館>・・・があった。
  自分の体験では、“水族館”とは「海の近くにあるもの」との認識であったが、入ってみて驚いた。イワナ、ヤマメ、イトウをはじめ本格的なものである。
  隣には大きな国民宿舎があった。
  村内には、3つのJRの駅があるが、そのうちの1つは近代的なレストラン(村が経営)。もう一つは民俗資料館も兼ねていた。
  役場の講堂で、村長の話を聞いたが、実践に裏付けられた自信に満ちた話だった。
 
村長は、・・・<谷川連峰直下の明るいトンネルを抜けると、そこは白銀のユートピアの里であった。といったが、私がアレンジしたのは、「そこは下水道が完備し、快適な生活環境が整備された白銀のユートピアの里であった

  これだけの事業をやると、「借金も多く村の財政は厳しいだろう」と思ったが、意に反して、健全財政である。
◎ 住民1人当たりの一般会計決算額は(S60)

   入広瀬村 688.000円 公債費比率  10.2%
  新潟平均 240.000円 公債費比率  15.0%
  駒ヶ根市 260.000円 公債費比率  15.4%


◎ 入広瀬村の一般会計の収入のうち、 
・  地方交付税+国、県支出金(補助金、負担金など)= 59%。
  <国や県から返さなくてよい金を、どんどん借りているということである。>

 さんさい共和国 ・ ユニークなイベント 

  1983年10月(S58)全国24ヶ国目のミニ独立国が誕生した。その名も「さんさい共和国」・・・ この共和国には、山菜の絵入りの「国旗」があり、「国歌は山菜のふるさと」で、曲は「北国の春」である。

   1  山菜  ふるさと  入広瀬         2  山菜  ふるさと  入広瀬
      みどり濃き  山々 越後路の          ・・・・・・・・・
      ああ  せせらぎの里
      季節で味わいの  ぜんまいなめこ
      今宵は炉端で  なじみと飲もう

  春・建国祭、山菜ツアー。  秋・独立祭、紅葉ツアー。  冬・雪おろしまつり。
  都会から1人、1万円出して1泊2日の雪おろしにやってくる。
  雪上ソフトボール世界選手権大会も開かれている。このソフト大会に来たアメリカの女性が、入広瀬の青年と結婚したそうである。後日談・・・ この2人は、アメリカに行ってしまった。

  この共和国の国民になるには、国税(年・15000円)を払えば誰でも国民になれ、年4回・故郷特産品の宅配やその他の特典があるという。
  村長は「 ぜひ、この共和国に亡命を」と訴えていた。我々も、
一晩亡命することにした。
  役場から10Kmも奥の部落の民宿だが、もちろん水洗トイレである。
  岩茸(たけ)、なめこ、ゼンマイ、わらびなどの山菜や、刺身はイワナだ。鶏のからあげ、松たけの茶碗蒸し ・・・・・ など、
海のものは一つもなかった
 山菜を・・たべたー。今日も、十分堪能した。

村全域が「豪雪地帯対策特別措置法」の適用を受け、「過疎法」の適用も受けている。国からの借金(起債)をいろいろな名目の「法」を適用し、事業費への起債の充当率も極端に高い(90%充当とか)、その起債への交付税措置<97%とか>とにかく、補助金や返さなくてよい“借金”・・をどんどん取り入れ、事業をする。
“角栄”という人の力が、ここまで及んでいる・・・ということだ。
駒ヶ根では、中沢地域に山村振興法と、中山、大曽倉に辺地債が適用されるだけである。


 

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